はじめに
ブランド「あかべえそふとつぅ」さんから発売された「車輪の国、向日葵の少女」をプレイしました。
ライターはるーすぼーいさんです。
この方の作品としては「無能なナナ」「G線上の魔王」をプレイさせていただいており、どちらも伏線が丁寧に貼られており好きな作品です。
初夏。罪を犯すと『特別な義務』を負わされる社会。
罪人を更正指導する『特別高等人』という職業を目指す主人公・森田賢一は、
その最終試験のため、とある田舎町を訪れる。
『1日が12時間しかない』『大人になれない』などといった義務を負う少女たちと学園生活を送るが、
『恋愛できない』少女・夏咲と出会ってから、賢一の歯車が狂いだす。
崖にひっそりと建てられた自分の墓、山間洞窟に隠された父親の遺産が次々と賢一を追い詰めた。
贖罪を問われた男が見た、車輪の国の真実とは……。
重厚な世界観を軽妙なタッチで描いた、感動のヒューマンドラマ。
この記事では ganyariya が本作品をプレイした感想をまとめます。
よかった点(好きだった点)
ヒロインたちの悪い性格・行動を徹底的に描いている
本作品のヒロインである
- さち
- 灯花
- 夏咲
ですが、それぞれ異なる「罪を犯した代償である義務」をもっており、その義務による影響で性格に何かしらの難があります。
この「性格の悪いところ」がシナリオのなかで徹底的に描かれており、ヒロインたちへの嫌悪感・いらだちをユーザに強制的にいい意味で促しているなと思いました。
たとえば、さちは
- できるだけがんばりたくない、楽に稼ぎたい
- やらなければいけないことをできるだけ後回しにする
- 後回しにしたことをいろいろと理由をつけて正当化する
- 主人公に急かされてイライラしたため、そのストレスを移民の友達である「まな」にぶつける
などの行動をとり、「生活時間制限」の義務に影響された悪い性格・行動になっています。
(これらの悪いところを見ていると「自分もやらないといけないことをあとに回してしまうな…」という反省があり、プレイするのが辛くなってきます。)
多くのシナリオゲームでは、ヒロインはただただ魅力的に描かれ、どう 100 をきれいに描くか、そしてそれをユーザに好きになってもらうか、がメインです。
一時的にシナリオの都合上悪い性格を少しだけ出して、そこを引き出しにさらにより良い描写を生み出すなどはありますが、そこまでの差分ではありません。
しかし、本作ではヒロインは徹底的に問題児であり、性格に大きな歪みが存在します。
この歪みが丁寧に描かれていることで、義務の解消前と解消後におけるヒロインの成長、ならびにシナリオの深みが出ていてとてもよかったです。
3 人のヒロインのうち、とくにさちと灯花の行動・性格に難があり、その分この二人のことはとても好きになれました。
大音灯花のルートがとても洗練されていること(かわいい)
2 人目のヒロインである大音灯花のルートが洗練されていて、とても良かったです(大好き)。
というのも
- 伏線がきれいに練られている
- 大音灯花がとてもかわいい(重要)
- 「問題のある家族」の構造がとてもしんどい(いい意味で)
ためです。
大音灯花は「親の言うことをすべて聞かなければいけない義務」を背負っており、義理のお母さん(京子さん)に言われたことはすべて守らなければいけません。
この生活を続けた結果、灯花は自分で物事を考えることができず、他者にすべての選択を委ねようとします。
かつ、その選択が自身にとっても重要であればあるほど、その選択を誰かに委ねて責任をとことん押し付けようとします。
その分、ルート終盤では灯花が成長し、自分で責任持って決めて行動しているのは心が打たれました。
なにごとも決められなかった少女が、自分の夢・家族のために選択して進んで行動する… とてもよかったです。
決められないから主人公に頼っている姿もとてもかわいい… (終盤で自分で決められるようになった強い灯花もかわいい)
灯花ルートでは、灯花と京子のいびつな親子関係・親子愛が描かれていてそれもとてもよかったです。
灯花も京子も互いに不器用ながら相手を思いあい、そして最終的に灯花が京子のすべてを許す、そして「何も選ばない」ということを選び出すのが良…
驚く伏線ポイントが多くあったこと
るーすぼーいさんの作品では「おぉ!」と驚く伏線ポイントが多く存在します。
多分に漏れず、今作においても伏線が多く存在し、プレイしているなかで何度も驚かされました。
本作品に対しての感想
G線上の魔王とは異なる面白さである
まさんさんの YouTube でも触れられていますが、 G 線上の魔王とは面白さの出方がだいぶ異なるなと思いました。
G 線上の魔王はジェットコースターのように最初からちょっとずつあがっていて、最後のルートですべての謎と伏線を一気に回収する、という爆発型の面白さでした。
一方で、車輪の国は最初から最後まで安定した持続型の面白さでした。
これら両方をキープするのはシナリオを書くうえでとても難しいことなのだろうなぁと思いました。
環境で人は変わること
本作品を通して、「環境で人は変わってしまうこと」がいい意味でも悪い意味でも発生する、ということを改めて学びました。
さち・灯花・夏咲はそれぞれ罪、そして義務という環境によって、性格に大きな歪みが発生してしまいました。
とくに、夏咲は「同一人物なのか…???????」となるほどの違いです。
そして、主人公や家族とのふれあいを通じて(周囲の環境)、ヒロインたちが大きく成長し、性格の歪みも解消されていきます。
やはり「人間は環境によって大きく左右される」ことは事実であり、 ganyariya がこれから生きていくうえでも大事にしたい考え方だなと思いました。
ganyariya はこれまでも「才能 <<< 環境」のように、人間の大部分は環境で決まると考えていますが(もちろん遺伝・才能も要素としてある)、
才能で負けている部分については環境を良くする・変えることで改善するのがよいのだなと思いました。
まとめ
本作は
- すべてのヒロインの性格の歪み・悪さが徹底的に描かれ、その結果ヒロインに対する興味・没入感がとても高い
- 家族・友人の愛がシナリオを通して丁寧に描かれている
- 伏線が多く回収され(驚きポイントが何度もある)
ており、とてもよい作品でした。
「環境で人は左右される」ことを意識して、エンジニア活動をこれからも行いたいなぁとおもいました。